2016/03/02

東日本大震災から5年、被災3県の医師に復興の現状を調査 三県全体では震災前の9割程度まで復旧するも、福島県で遅れが見られる 復興における問題、「看護師」「医師」不足

エムスリー株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長:谷村 格、以下「エムスリー」)は、日本国内最大級の医師会員を有する医療従事者専門サイト「m3.com」で、東日本大震災から5年直前となる2016年1-2月に岩手、宮城、福島の被災3県に在住、在勤の医師を対象に震災での被害や復興の状況についてアンケートを実施、392人の回答を公表しました。回答者の内訳は、岩手県78人、宮城県183人、福島県131人です。

■結果のポイント
(1)震災直後は、勤務先の病医院の機能は4割前後まで落ち込むも、2016年現在では9割超にまで回復。県別に見ると、当初、津波の被害が甚大で最も落ち込んだ宮城県がほぼ震災以前にまで回復。一方で、福島県の回復が遅れており、福島第一原発事故後の処理の遅れが影響していると見られる。
(2)医療の復興において5年間で問題となったものは「マンパワーの不足」(3県全体69%)、「施設・設備、機器等の不足」(同34%)、「政府の無理解、力不足」(同33%)が多かった(複数選択)。
(3)不足している医療職としては「看護師」(三県全体72%)、「医師」(69%)が多かった(複数選択)。
(4)震災前と比べて、2016年現在の患者の傾向は「高齢層が増えた」(3県全体44%)、「生活困窮者が増えた」(同35%)、「メンタルヘルスの患者が増えた」(同29%)が多かった(複数選択)。
(5)福島県の医師限定で、原発事故に関する被曝による健康被害について尋ねたところ、「影響はない」(38%)、「将来的には生じる可能性がある」(34%)、「分からない」(24%)「現時点で生じている」(5%)――だった。

■調査の概要
2016年1月26日から2月23日までの間、岩手、宮城、福島の3県に在住在勤のm3.com医師会員に対して実施。三県共通質問を11題、福島県限定の3題を出題した。岩手県78人、宮城県183人、福島県131人の計392人から回答を得た。結果は自由記述欄を含む結果は、医療従事者専門サイト「m3.com」(会員制)で、弊社記事として公開します。

■結果の詳細 ※回答者:岩手県78人、宮城県183人、福島県131人、3県計392人。
Q 2011年3月の震災前を100とした場合、勤務されている病医院の復興度合いは、時間の変化とともにどのように変化してきたでしょうか。0から100までの整数でご回答ください。
20160302_01.png

Q 2011年3月の震災前を100とした場合、お住まい、勤務している地域の復興度合いは、時間の変化とともにどのように変化してきたでしょうか。0から100までの整数でご回答ください。
20160302_02.png

Q 震災後の5年間で、復興において医療に関してはどのような問題がありましたか。【複数選択】
20160302_03.png
※()内は回答人数

Q 勤務先や周辺医療機関で不足している医療職があれば、お選びください。【複数選択】
20160302_04.png

Q 震災前と比べて、2016年時点の患者の動向に変化はありますか。【複数選択】
20160302_05.png

Q 被曝による健康被害についてどのようにお考えですか。
※福島県在住、在勤の医師のみを対象
20160302_06.png ※回答者:福島県131人

■医療従事者専門サイト「m3.com」とは
エムスリーが運営する、国内最大級の医師が登録する医療従事者専門サイト「m3.com」は、「医師をはじめとする医療従事者が、『欲しい!』と思った情報に、最も迅速かつ的確にたどりつけるサイト」を目指し、専門医療情報に特化したニュース、文献検索、会員専用コミュニティ、独自コンテンツ等を会員に対して無料で提供しています。

■記事引用時のお願い
・医療従事者専門サイト「m3.com」調べ、とご明記いただきますようお願いします。
・WEBでご紹介いただく場合は、https://www.m3.com/へのリンクをお願い致します。

医師の声  ※一部をご紹介します。

・(震災時は)胸腔ドレーンを挿入しているときでした。特に問題なく終了しましたがそれからの10日間は医局の床で寝泊まりでした。非常電源で緊急手術も可能でしたが、患者優先のため風呂に入れなく辛かった。【岩手県】
・東北を含む地方の医療のあり方、現状を全く分かっていない。東京にいながら、感覚だけで采配をふれるわけが無いことくらい分かってほしい。【岩手県】
・(人材確保のため)公募を出したり、知り合いに声をかけたりはするものの、ほとんど効果なし。実際震災があってもなくても人が定着しにくい地域だったのかもしれない。特に東北新幹線は医療人の流出に拍車がかけた気がする。【宮城県】
・(2016年4月にできる東北医科薬科大医学部について)東北大学からの移動が多いです。人手が取られて医師不足が懸念されます。しわ寄せは人口が少ない地域に来ると思います。【宮城県】
・(被爆の)身体的な健康被害は生じないだろう。神経症が生じる人はいるかも知れない。【福島県】
・健康被害は将来の人間が検証しないと分からない。己の判断を信じて生きていくだけです。【福島県】