エムスリーは「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」をミッションに掲げています。
医療分野は世界のGDPの10%を占め、この地球上に生きるすべての方にかかわりがある社会的意義の大きな事業領域です。一方で、この分野には医療従事者や患者にとどまらず、複雑かつ多様なステークホルダーが存在し、バリューチェーンも予防・検査から緩和ケアまで多岐にわたり、それぞれに高い専門性・想像力・解決への執着が求められます。エムスリーは、日本に限らず世界中の難易度の高い医療課題に向き合うべく、世界最大規模の医療従事者向けプラットフォームを有する我々だからこそ取れるユニークなアプローチで、課題解決・業界の改善につながる、価値あるサービスやプロダクトを創出してまいります。
このような取り組みを通じて、我々が掲げるミッションの実現を目指し、すべての人の健康と福祉の充実、社会の持続的な発展に貢献していきたいと考えております。
加えて、これらの価値創造の活動を支える重要な資本として、我々が有する人的資本・プラットフォーム・経営基盤を一層強化・整備していくことが重要と考えており、取締役会等においても、定期的にサステナビリティ、ESGの方針・取り組みにつき議論を行っております。
今後も、ステークホルダーの皆様からの信頼を真摯に受け止め、期待を上回る価値を提供し、医療分野が抱える課題の解決に貢献してまいります。
世界の医療産業が抱える複雑な課題を、ITの力を活用して解決しすべての人の健康と福祉の充実、社会の持続的な発展に貢献
世界のGDPの10%を占め、医師・医療関係者から一般の方まで、この地球に生きるすべての方にかかわりがある医療産業分野
医療従事者
医療機関支援
生活者
患者支援
製薬/医療機器等の企業支援
インターネット分野のみにとどまらず、リアルオペレーションとの掛け算により事業分野を拡大
複数の事業のシナジーにより、継続的な競争優位性を創出する
世界最大規模の医療従事者向けプラットフォーム
それぞれの分野で課題解決に使命感を持ったプロフェッショナル集団
高いレベルのIT技術力・技術基盤
SASB(サスティナビリティ会計基準)やSDGs (国連の持続可能な開発目標) をはじめとする国際的な指標を参照し、またステークホルダーからの声を踏まえ、当社の事業活動やミッションに関連性の高い社会課題を抽出いたしました。
株主、投資家、顧客や従業員との定期的な対話、外部のESG評価機関からの評価結果を勘案し、当社にとっての重要課題を抽出しました。
2.で抽出した課題につき、取締役会において当社の経営戦略やミッションとの関連性を評価し、取締役会での議論を経て、マテリアリティを特定いたしました。
マテリアリティ(重要課題) | SDGs | |
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E | GHG排出 | |
エネルギー管理 | ||
S | 顧客のプライバシー/データセキュリティ | |
医療アクセスの拡大 | ||
サービス・製品の品質と安全性 | ||
労働慣行および従業員の健康と安全 | ||
従業員エンゲージメント、多様性とインクルージョン | ||
G | ビジネスモデルの優位性・柔軟性 | |
経営倫理 |
ユーザー | 日本 | 北米 | 欧州 | アジア その他 |
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医療従事者 | ||||
医療機関 | ||||
製薬企業 マーケティング部門 | ||||
製薬企業 研究開発部門 | — | — | ||
患者・一般ユーザー | — | — |
取締役11名のうち、独立役員に指名している取締役は4名です。
社外取締役の独立性判断基準については、東京証券取引所の定める基準に準拠しています。
当社における業務執行上の意思決定の多くは、取締役会及び経営会議に集約されています。定例取締役会を原則月1回、経営会議を原則週1回開催し、取締役会規程及び決裁規程に基づき、業務執行に係る意思決定を行うとともに、業務執行状況の確認を行っています。
また当社は、取締役会の実効性について、全取締役が取締役会の運営体制・監督機能等の観点から記名アンケートおよび監査等委員への個別ヒアリングによる自己評価を実施し、結果を取りまとめております。
当年度に実施した調査においては、当社取締役会が「全体として機能している」との評価が回答者から得られており、概ね良好な結果となっております。
企業経営 | グローバル経験・グローバルビジネス | 業界経験・専門的知識 | IT・DX・テクノロジー | M&A | 財務会計・資本市場との対話 | SDGs・ESG・多様性 | 学識経験 | |
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谷村 格 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
都丸 暁彦 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||
槌屋 英二 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||
中村 利江 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||
田中 良直 | ◯ | ◯ | ◯ | |||||
山崎 聡 | ◯ | ◯ | ||||||
吉田 憲一郎 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||
津川 友介 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||
山崎 繭加 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||
江端 貴子 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||
鈴木 智子 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
2024年6月26日の定時株主総会の決議を経て、現在当社における女性取締役数は11名中4名(36%)です。
当社の取締役会は、様々な分野で相当程度の経験を積んだ多様な取締役により、定款で定める員数で構成することを方針としております。
今後も、女性取締役比率40%を維持することを目標としてまいります。
※対象はエムスリー単体
2030年までに女性管理職比率を40%に上昇させることを目標としております。
※対象:FY21はエムスリーグループ(国内)、FY22およびFY23はエムスリーグループ(国内外)
※なお、2023年度末におけるエムスリー単体の女性管理職比率は17%(66名中11名)です
※対象:FY21はエムスリーグループ(国内)、FY22およびFY23ははエムスリーグループ(国内外)
※派遣社員およびパートタイマーは含まない
※なお、2023年度末におけるエムスリー単体の女性従業員比率は35%(649名中224名)です
※対象はエムスリー単体
※派遣社員およびパートタイマーは含まない
当社は、ソニーグループ株式会社(以下「ソニー」という)の持分法適用関連会社になります。
ソニー及びそのグループ会社と、事業上の依存関係は無く、一定の独立性を確保しています。ソニーの役員を兼務する当社社外取締役1名は、その専門性ならびに株主の視点から当社グループの経営力全般の強化のため、当社より就任を要請したものですが、これ以外の人的な交流はありません。
ソニー及びそのグループ会社との経済的合理性がある取引については、積極的に継続、推進しますが、資本関係を理由とした排他的な取引は行わない方針です。
2000年の設立時以降、エムスリーは事業タイプおよび展開国数を拡大し続けています。事業領域の増加に比例して、事業間のシナジーポテンシャルおよびリスクに対する柔軟性も増大していると評価しています。
2010 | 2015 | 2020 | 2023 | |
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展開事業数の推移(事業タイプ数×展開国数) | 10 | 24 (2.5x) | 56 (5.5x) | 73 (7.0x) |
※()内は2010年を1としたときの倍数
エムスリーグループは、行動規範にも事業活動を行なう各国・地域のあらゆる適用法令、規則を遵守し、誠実かつ倫理的に事業活動をおこなうことを基本方針として明記しております。取締役会、経営会議のコミットメントのもと、今後も経営倫理実践のための取り組みを進めてまいります。
当社グループのビジネスは、インターネットを活用したサービス提供が中心であり、固定資産の保有も限定的なため、環境負荷の小さい事業です。
また、電子契約や社内書類の電子化によるペーパーレス化推進、リモートワーク推進、エネルギー効率のよいサーバ等の調達をはじめとする省エネ推進等の取組を進めています。
2021年には、気候変動に対する取組の一環として、TCFD提言への賛同、TCFDコンソーシアムへの入会を取締役会にて決議しました。
現在グループ会社全体での二酸化炭素排出量について、SCOPE1, SCOPE2に該当する排出量の算定を進めておりますが、SCOPE3の算定についても2025年3月期中に取り組みを開始する予定です。
SCOPE1、SCOPE2は電気、蒸気合計。対象拠点は当社オフィス及び外部データセンター(3拠点)
2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | |
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SCOPE1(kg-CO2) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
SCOPE2(kg-CO2) | 486,607 | 469,518 | 458,627 | 180,264 | 151,503 |
SCOPE1,2合計 | 486,607 | 469,518 | 458,627 | 180,264 | 151,503 |
電力使用量(kwh) | 1,076,087 | 1,044,718 | 991,130 | 669,331 | 565,108 |
CO2排出量原単位 | 1,801 | 941 | 824 | 331 | 294 |
売上高(億円) | 270.12 | 499.11 | 556.87 | 545.3 | 515.2 |
※対象はエムスリー単体
※エムスリーがオフィスビル共用部及びテナント専用部で使用する電力は、2022年4月より、再生可能エネルギー由来に切り替わりました。
※更新日時点で入手可能な情報から合理的な算定を行い算出しておりますが、第三者による保障・認証を受けているものではありません。
社会
プロフェッショナル人材の確保
エムスリーは、「価値のある仕事にはそれに見合った報酬を」の考え方のもと、自ら価値を創り出す社員に対しては報酬を惜しみません。結果として、医療業界がより良い方向に向かい、個人も会社も成長する。それを当たり前にできるような体制づくりにも注力しています。
取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬額は、会社全体の業績、業績に対する個々人の貢献度、ならびに他社の役員報酬データを踏まえた優秀な人材確保に必要な報酬水準を勘案し、株主総会で決定された取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬限度額の範囲内で、代表取締役が取締役会からの委任を受けて、決定しています。
労使関係
エムスリーグループは、行動規範においても「健全な雇用・労働」について明記しており、従業員の結社の自由ならびに団体交渉の権利行使を支持しております。現在労働組合は結成されておりませんが、各国の労働法は順守しており、労使関係は円満に推移しております。
人材育成・人材開発方針
エムスリーには、様々な専門性を必要とするポジションが存在します。社員には自分のキャリアパスを考え、国内外合わせて40以上の連結子会社ならびに持分法適用関連会社を含めた多様なポジションに応募するフェアな機会が提供されています。
すべての新入社員には、オンボーディングの支援があり、それぞれの現場で活躍するために必要なスキルを効率よく吸収できるよう、事業内容や組織に併せたトレーニングが提供されています。
年2回の目標面談やチームや職位の垣根を超えたオープンで柔軟な仕組みの360度評価、1on1のキャリアカウンセリングやメンタリングサポートに加え、必要な業務資格や公的資格取得支援を受けることもできます。
育成チームによる体系的なトレーニング環境や、管理職を含め、すべての社員が継続的に研修やナレッジシェアを受けることができます。
また、取締役については、各人の判断において、必要な知識の取得・能力の研鑽に努めることを原則としていますが、取締役からトレーニングの要望があった際に、その必要性等を検討の上、費用支援を行うか否かを判断しています。
リテンションプラン
グループ企業それぞれの事業内容や社員構成等に応じ、資産形成支援や各種福利厚生制度が提供されています。各種教育や資格取得支援、メンタリングを通じて成長を支援する制度があります。また、社内公募制度を通じ、様々な希望に応えつつ自発的なキャリア形成を支援、エムスリーグループ全体で活躍の場を提供しています。なお、エムスリー株式会社において2023年度中に社内公募プログラムに応募し、異動・兼務により新たな業務を始めた社員は42名です。
更に、素晴らしい成果を出した社員や先進的な取り組みをした社員を表彰する制度などを通じて、優秀な社員およびマネジメント人材のリテンションに努めています。
上記に加え、毎四半期にサーベイを実施することにより、従業員満足度を定期的にモニタリングしています。
ダイバーシティ
エムスリーは、多様な人材こそがエムスリーの強みの源泉であるとの考えから、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障害の有無にとらわれない採用方針を掲げています。
データセキュリティ
当社は、各種サービスを行うためにインターネットを利用したコンピュータシステムを構築しております。当社グループは、継続的なサービス水準の維持向上を図るため、適宜新しいシステム技術やセキュリティ関連技術等を取り入れながら、継続的な設備投資並びに保守管理を行っています。
エムスリー株式会社はPマークを取得しており、グループ会社においてもセキュリティの強化および必要な認証を取得する取組を推進しています。具体的には、Pマークのためのセルフアセスメントの実施、PマークやISMSのフレームワークに沿って情報資産の整理やリスクの特定を行うとともに、情報セキュリティポリシーも策定しています。
また、担当役員・法務担当者・システムエンジニア・情報システム担当者が参画する情報セキュリティ委員会を設置し、社内外の情報セキュリティに関連する情報収集やグループ会社の対策状況のモニタリング、インシデント再発防止や予防的施策の検討を行うとともに、情報セキュリティに関する社内研修を定期的に行うことで、社員のセキュリティ意識の維持向上を図っています。
さらに、経営層・IRおよび法務担当者・システムエンジニア・情報システム担当者・カスタマーサポート担当者およびグループ会社担当者が参画するM3-CSIRTを設置し、具体的なインシデント対応の体制を整えるとともに、エンジニアセキュリティチームを設置し、商用システムの脆弱性対応状況の情報収集とモニタリング、およびグループ会社の情報セキュリティ対策の技術的支援を行っています。
医療アクセス拡大の取組
「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」をミッションとして掲げるエムスリーは、医療を通じた社会的CSVインパクトを生み出すことを追求しています。
患者のみなさま向けの取組:
デジスマ診療を利用した診療件数は年間約560万件(前年度の5倍超)、院内滞在時間も168万時間削減
上記も含め、グループ全体で患者さんの待合室での待ち時間を3,540万時間削減・・・約4,000年、約50人分の人生に相当*
(FY2023、グループ全体の総受付数約3,400万件より)
*厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/index.html、2024年4月18日参照)参照のうえ、2023年時点の日本人の男女の平均寿命をもとに換算
医療従事者のみなさま向けの取組:
サービス・製品の品質と安全性
当社は、サービスの品質向上および品質マネジメントのため、エンジニアリンググループ内に「QA(Quality Assurance)専門チーム」を設け、品質チェック体制を構築しています。サービス提供におけるエラーの未然防止および再発防止のため、各チームでのPDCAプロセスを導入し、継続的に改善を行っています。
特に製薬企業向けマーケティングなどの事業においては、標準作業手順書(SOP)の整備および運用を行うとともに、必要なグループ会社においてはISMS取得も推進しています。
当社における標準作業手順書(SOP)では、経営会議が指名する品質管理責任者のもと、年1回以上の訓練や内部監査の実施、また障害や緊急事態に対する定常的な備えなどについての具体的なプロトコルを定めており、品質目標達成に向けたサービスの品質向上に取り組んでおります。
また、ユーザーからのフィードバックについては、各チームでサービス改善に活用するためのPDCAプロセスを導入しています。
その他データ
※1 対象者母数に育休などの休職者含む
※2 対象はエムスリー単体